結論
ネットの世界で、ハリーポッターの「お辞儀」とは、ヴォルデモート卿のことを指します。
由来
世界中で大人気の小説・映画の「ハリー・ポッター」シリーズ。
ヴォルデモート卿は、主人公ハリーの両親を殺害した最大最強の宿敵であり、闇の帝王としてシリーズを通してのラスボスである。
ヴォルデモートは目的のためなら手段を選ばない冷酷無比な性格で、「純血主義」のもと、魔法を使えない一般人マグルの支配、マグル生まれの魔法使いの排除をもくろんでおり、多くの敵対する魔法使いやマグルを虐殺。
あまりの残虐さとその強さから多くの魔法使いは「ヴォルデモート」の名を口に出すことさえ恐れるようになり、ヴォルデモートを示す言葉として「例のあの人 (You-Know-Who) 」 、「名前を言ってはいけないあの人 (He-Who-Must-Not-Be-Named) 」などが用いるようになった。
そんなヴォルデモート卿だが、ネットの世界では「お辞儀」というなんとなくマヌケな呼ばれ方をされてしまっている。
例:お辞儀は自分は半純血のくせに純血主義なところが、いかにも学歴厨っぽい。
この「お辞儀」の元ネタとなったのは、シリーズ4作目となる「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」でのクライマックスシーンである。
悪の帝王ヴォルデモートは、因縁のハリーポッターと決闘の際に以下のセリフを言い放った。
「決闘のやり方は学んでいるな? まずは互いにおじぎだ…」
「格式ある儀式は守らねばならぬ。
ダンブルドアは礼儀を守れと教えただろう…」
「おじぎをするのだ!!」
主人公との決闘というシリアスなシーンで、「おじぎ」という表現が妙に可愛く、決闘のルールをしっかり守ろうとする児童のような幼さが、他のセリフと比べ浮いてしまっており、以降日本のネットではネタ的に紹介されることが多くなってしまった。
転じて、「お辞儀」という言葉自体がヴォルデモートを意味する言葉となってしまっているのである。
本来の「お辞儀」のニュアンス
当然だが、このセリフは「ヴォルデモートも『おじぎ』って言葉使うんだ~、かわいい~」などと思ってもらうためのものではないだろう。
ヴォルデモートが魔法界を恐怖に陥れるほどの強大な力と歪んだ心を持ちながら、儀礼に乗っ取った正々堂々の決闘を演出して、ハリ-を真っ向から叩き潰そうとする狡猾さが窺える。
そもそもが決闘という体裁を繕って入るが、この時点で(物語終盤でも)、ヴォルデモートとハリー両者の実力差は歴然であり、周りはヴォルデモートの手下(死喰い人)だらけで、実質的にはハリーの処刑と変わらない。
ヴォルデモートの儀礼を重んじつつも、一方的な殺害に一切の良心の呵責を感じない冷酷さを表したシーンだと言える。
英訳の問題
日本語版で「おじぎ」と表現された部分は、原語では「Bow」という単語になっている。
確かに「お辞儀」を表す英語ではあり、意訳などではないが、他にもいくつかの意味がある。
「弓」「船首」「一礼」「会釈」「敬う」・・・などだ。
と考えると、なんとなくこの場面では、「礼をしろ」や「こうべを垂れよ」などのほうが適切なような気がしないこともない。
日本語訳の問題と指摘する人もいるが、あえて「おじぎ」のような慇懃無礼で小馬鹿にするニュアンスも込めたほうが適訳ではないかという意見もある。